尿路上皮癌 (腎盂尿管癌・膀胱癌)

膀胱がん、尿管がん、腎盂がん (尿路上皮がん)

尿は腎臓でつくられ、腎盂(じんう)内に流れ出し、尿管(にょうかん)を流れて膀胱(ぼうこう)にたまります。膀胱にたまった尿は尿道を通って体外に排泄されます。この尿の通り道(腎盂、尿管、膀胱)は全て移行上皮という種類の粘膜でおおわれており、この粘膜のことを一般的に尿路上皮と呼びます。尿路上皮にがんが発生することがあり、膀胱にできたものを膀胱がん、尿管にできたものを尿管がん、腎盂にできたものを腎盂がんと呼びます。ほとんど(90%以上)は尿路上皮がんという種類ですが、まれに扁平上皮がんや腺がんなどの場合もあります。

★症状
初期の段階では無症状のことも多いですが、下記のような症状を伴う場合もあります。
血尿、頻尿、排尿時痛、排尿困難

尿路上皮がんの特徴の一つとして、痛みなどを伴わない血尿(無症候性血尿)がみられることがあります。この血尿はすぐに消失してしまうことも多く、そのせいで治ったと勘違いして受診の機会を逃し、尿路上皮がんが進行した状態で後日発見されるといった症例をしばしば経験します。したがって、一度でも血尿がでたら、たとえすぐに血尿が治ったとしても、なるべく早期に泌尿器科を受診することがとても重要です。

★検査
上記の症状から、尿路上皮がんが疑われた場合、場合にもよりますが、下記のような検査を行います。

  • 尿検査: 血尿の有無、尿路感染症の有無、がん細胞の有無などを確認します。
  • エコー検査: 尿路に腫瘍などがないかを確認します。
  • 血液検査: からだにその他の異常がないかなどを調べます。
  • 膀胱鏡: 膀胱の中をカメラで観察します。当院はやわらかくて細いカメラを導入しています。検査時間は状態にもよりますが、おおよそ5分前後です。
  • CT: 腎盂、尿管に腫瘍がないかどうかを確認します。さらにほかの臓器に転移などがないかどうかの確認も同時に行います。
  • MRI: がんの深達度(どこまで深く進んでいるか)を確認します。
  • 骨シンチグラフィー: 骨に転移がないかどうかを確認します。
  • 逆行性腎盂造影: 腎盂がん、尿管がんが強く疑われる場合、カメラを使って尿管内に細いカテーテルを挿入し、尿の採取、造影を行って、腎盂・尿管の詳細な形態を調べることがあります。
  • 尿管鏡検査: 腎盂がん、尿管がんが強く疑われるものの、逆行性腎盂造影でもはっきり診断がつけられない場合、尿管鏡というカメラを尿管内に挿入して、実際に尿管内に腫瘍があるのかどうかを観察する場合があります。

★治療
①膀胱がん
膀胱がんの場合、がん細胞が筋層に達しているかどうかで方針が変わってきます。

まず初めに、内視鏡を用いて腫瘍の切除を行い(経尿道的膀胱腫瘍切除術:TURBT)、切除した腫瘍を顕微鏡で詳細に調べます。診断がつかない場合、切除が不十分であることが判明した場合、再発リスクが高いと判断された場合、後日再度TURBTを行うこともあります(second look TURBT)。

1. 腫瘍が筋層に達していない場合
抗がん剤の膀胱内注入を外来通院で継続します。抗がん剤は膀胱内に注入するだけなので、重篤な副作用が出現することは極めてまれです。
がん細胞の性質によっては、抗がん剤ではなく、BCG(ウシの結核菌)を膀胱内に注入する治療を外来通院で継続します。
上皮内がんの場合は、BCG膀胱内注入療法をまず行うことが一般的です。

2. 腫瘍が筋層に達していた場合
基本的に膀胱全摘除術+尿路変更術を行います。当院では従来の開腹手術に比べて身体への負担が少ないダビンチを用いたロボット支援手術を導入しています。また、術後の再発率低下を目的に、手術前に抗がん剤による治療を数回行います。
尿路変更には①腹部にストマ(尿の出口)を作成し、袋に尿がたまるようにする方法、②腸を用いて代用膀胱を作成し、尿道から排尿できるようにする方法があります。状態に応じて、最善となる方法を提案していきます。

3. CTで遠隔転移などがある場合
抗がん剤での治療が基本となります。はじめは入院で行うことが多いですが、なれてきたら外来通院で継続していきます。抗がん剤の効果が不十分な場合、最近は免疫チェックポイント阻害薬(ペンブロリツマブ)を使用した治療ができるようになりました。当院でも適応となる症例には積極的に導入しています。

②腎盂・尿管がん
こちらも膀胱がんとほぼ同様の検査を行います。転移がある場合とない場合で治療方針が異なってきます。

1)転移がない場合
全身状態に問題がなければ、腫瘍がある側の腎尿管全摘除術が標準治療になります。当院では、基本的に腹腔鏡で手術を行っています。

2)転移がある場合
抗がん剤または免疫チェックポイント阻害薬による治療を行います。内容は膀胱がんのものと同様です。

★原因
喫煙は膀胱がんの主な危険因子です。男性の50%以上、女性の30%の膀胱がんは喫煙が原因といわれています。
また、ナフチルアミン、ベンジジン、アミノビフェニル、オルトトルイジンなどの化学物質にさらされることも危険因子とされています。
日本ではあまり関係ありませんが、エジプトのナイル川流域では、ナイル川に生息するビルハルツ住血吸虫が膀胱がんを発生させている可能性が高いといわれています。
その他にも、フェナセチン含有鎮痛剤、シクロフォスファミド、骨盤内臓器に対する放射線治療の時の膀胱への被ばくなどが考えられます。

★尿路変更について
膀胱全摘除術をうける方には、ほぼ例外なく尿路変更を行います。
《尿路変更の種類》

  • ストマ作成(回腸導管、尿管皮膚瘻、腎瘻など)
  • 代用膀胱作成

① ストマ

  • 回腸導管
  • 尿路変更では最も一般的な方法の一つです。回腸を一部切り出して、その端に尿管をつなぎ、もう片方をおなかの外に出して、そこから尿が流れ出るようにします。流出口には専用の袋を装着し、尿をためておけるようにします。ためた尿は定期的にトイレなどに廃棄する必要があります。

  • 尿管皮膚瘻
  • 腸を使用せず、尿管の切れ端を直接おなかの外に出して、そこから尿が流れ出るようにします。回腸導管と同じように、専用の袋を装着し、尿をためておけるようにします。ためた尿は定期的にトイレなどに廃棄する必要があります。

袋は通常2-3日ごとに交換が必要です。また、尿管のつないだ箇所が狭窄することがあり、尿管ステントという細い管を入れざるを得ない場合があります。その場合はそちらの定期交換も必要です。
入浴は、袋にたまった尿をすててから入ります。袋は耐水性がありますので、濡れても問題ありません。

  • 腎瘻
  • 腎盂に背中から直接カテーテルを挿入し、そこから尿が出るようにする方法です。尿管の広範囲が腫瘍で占拠されているなどの理由で、回腸導管や尿管皮膚瘻を作成できるだけの正常な尿管が十分に残せない場合に選択される場合があります。

② 代用膀胱
代用膀胱は、回腸導管と同じように腸管を切り出し、それを用いて新しく袋を作成し、そこに尿管と尿道をつないで、手術前と同じように尿道から排尿できるようにします。外見上、手術前と変わらないことがメリットです。

  • 適応
  • 尿道もしくは尿道の近く(膀胱頸部;膀胱の入り口付近)にがん細胞がないことを確認できている方は、患者様と十分に相談したうえで代用膀胱を作成します。

  • 注意点
  • 代用膀胱は腸で作ってあるため、尿がたまっても尿意を感じることはありません。また、自ら収縮して排尿する力もありません。そのため、定期的に腹圧で尿を排泄してあげる必要があります。それでも十分に排尿できない場合、カテーテルを使って定期的に尿を排泄する必要があります。