精巣癌

精巣癌について

・精巣腫瘍とは
精巣(せいそう)は、男性の股間の陰のう内部にある卵形をした臓器で、精巣腫瘍とは男性の精巣(睾丸)にできる腫瘍です。精巣腫瘍にかかる割合は10万人に1人程度とされ、比較的まれな腫瘍です。しかし、他の多くのがんと異なり、20歳代後半から30歳代にかけて発症のピークがあり、若年者に多い腫瘍であることが大きな特徴です。実際に20歳代から30歳代の男性では、最もかかる数が多い固形腫瘍(白血病などの血液腫瘍以外の腫瘍)とされています。詳しい原因は分かっていませんが、停留精巣(精巣が陰嚢内に入ってなくソケイ部などに留まっている病態)があると発生率が高くなることや、症例の3分に1程度に遺伝的因子が関与していると考えられています。

・精巣腫瘍の種類
1)セミノーマ
精巣腫瘍の50%以上を占める組織型です。放射線治療もに対する感受性が高い腫瘍です。
2)非セミノーマ
胎児性がん、卵黄嚢腫瘍、絨毛がん、奇形種やそれぞれが混在したものなどで、セミノーマより転移を起こしやすく悪性の経過をたどることが多いです。

・症状
精巣腫瘍の主な症状は、片側の精巣の腫れや硬さの変化です。多くの場合痛みや発熱がないため進行しないと気付かないことも少なくありません。また、精巣腫瘍は比較的短期間で転移(腫瘍(がん)が離れた臓器に移動して、そこでふえること)を起こすため、転移によって起こる症状があります。転移した部位により症状は異なり、例えば、腹部リンパ節への転移の場合では腹部のしこり・腹痛・腰痛などが、肺への転移の場合では息切れ・咳(せき)・血痰(けったん)などがあげられます。その他、肝臓、骨、脳などに転移することがあります。

・検査・診断
1. 触診
最初に陰のう内のしこりについて確認します。腫瘍が小さく精巣の一部を占めるだけのときには、腫瘍はやわらかい精巣の中に硬いしこりとして感じられます。腫瘍が精巣内をほとんど占めるように広がると、精巣全体が硬いしこりとして感じられます。この時期では、左右の精巣の大きさ、硬さの違いなどから自分で異常を発見することも可能です。また、水がたまった状態をしこりとして感じることもあり、これを水腫(すいしゅ)といいます。しこりが腫瘍か水腫かを判断するために、超音波検査も行います。

2. 腫瘍マーカー
腫瘍マーカーとは、腫瘍細胞がつくり出す物質で、腫瘍の種類や性質を知るための目安となるものです。精巣腫瘍の診断では、腫瘍マーカーが重要な役割を果たします。代表的な精巣腫瘍の腫瘍マーカーには、AFP(αフェトプロテイン)、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)およびhCG-β、LDH(乳酸脱水素酵素)などがあります。これらの腫瘍マーカーは、治療効果の判定や治療後の経過観察にも用いられます。ただし、すべての種類の腫瘍が腫瘍マーカーをつくり出すわけではなく、他の病気によってこれらの腫瘍マーカーの数値が上昇することもあります。

3. 画像診断
超音波検査で嚢内精巣部分のしこりを確認します。多くの場合、超音波検査によって腫瘍を確認することが可能です。そして、血液の流れがわかるカラードップラー超音波検査では、腫瘍の血流についても調べることができます。
胸部レントゲンやCT検査は腫瘍の状態や周辺の臓器への広がり、肺やリンパ節などへの転移の診断に有用です。必要に応じてMRIや骨への腫瘍の広がりを調べる骨シンチグラフィーなどの検査も行われます。

・病期分類
日本泌尿器科学会病期分類(Ⅰ期:転移なし、Ⅱ期:腹部のリンパ節に転移を認める、Ⅲ期:遠隔転移を認める)、TNM分類(0~Ⅲ期)、IGCCC分類(Good prognosis、Intermediate prognosis、Poor prognosis)などを用いて病期(病状がどの程度進んでいるか)を判断し、治療方針を決定します。

・治療
高位精巣摘除術(手術)
精巣腫瘍は進行が速く、転移しやすいという特徴があります。そのため、精巣腫瘍が疑われる場合には、まず病気のある側の精巣を摘出する手術を行います。そして、手術で取り出した組織を顕微鏡で調べると同時にCTなどの画像診断によって、腫瘍の種類と病期を確定します。腫瘍がセミノーマであるか非セミノーマであるかによって、その後の治療方針と予後(病気や治療などの経過についての見通し)が異なります。

後腹膜リンパ節郭清術(手術)
後腹膜リンパ節とはおなかの大血管周囲にあるリンパ節です。精巣腫瘍ははじめにこのリンパ節に転移を起こすことが多いため、転移のないI期の場合でも、再発を防ぐ目的でこの部分のリンパ節とその周りの組織を取り去る手術が行われることがあります。この手術を後腹膜リンパ節郭清術といいます。また、最初から後腹膜リンパ節に転移がある場合は、化学療法によってがん細胞を十分に死滅させてからこの手術を実施します。

化学療法
明らかな転移のないI期でも、再発の可能性が高い場合や、転移のあるII期以上の多くは、化学療法が行われます。 化学療法では、多くの場合複数の作用の異なる抗がん剤を組み合わせて治療を行います。精巣腫瘍に対する化学療法は、根治を目指して実施する治療であり、比較的大量の抗がん剤を使用します。従って治療中の副作用は、他のがんにおける治療と比べて強い部類に入ります。

放射線療法
セミノーマでは放射線治療が特に有効とされ、I期のセミノーマの再発予防のためとII期のセミノーマの比較的小さなリンパ節転移に対して放射線治療が行われることがあります。一方、非セミノーマでは放射線治療の効果があまり期待できないため、初期治療として選択されることはありません。また、精巣腫瘍は転移しやすいがんであるため、照射した範囲以外には効果があらわれない放射線治療は、転移巣が大きく広がっている場合、通常は行われません。

精子保存
手術、化学療法、放射線治療などにより造精機能が低下し不妊になる可能性があるため、治療前に精子を凍結保存することが可能です。

治療効果
Ⅰ期(転移がない)では、組織型に関係なくほぼ100%の生存率です。
Ⅱ期、Ⅲ期(転移がある)の5年生存率は病状により70~90%程度とされています。